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X-E1を2か月使った評価です [X-E1]

今回はかなり突っ込んだ内容なので、関心のない方はパスしてください。
また富士フィルムの関係者の方がこの記事をご覧いただくことを願っています。

富士フィルムのX-E1は使う人や使う目的で評価が分かれるカメラだと思います。
性格がまったく異なるカメラですが、一緒に使うことが多いニコンのD800との比較してみたいと思います。

X-E1とD800のAPSクロップモードはどちらもほぼ1500万画素相当ですが、画質的にはほぼ同等でしょうか。撮ったままのJPEG画像では、ダイナミックレンジ、階調性、高感度ノイズは大差なしで、AWBではD800はわずかにアンバーよりになるに対してX-E1はシアン寄りとなり見栄えは良くなりますが、D800の方が実際の色に近いでしょうか。

AWBの的中率ですが、かなり偏った個人的見解として、D800はほぼ50%で、X-E1はD800よりわずかに的中率が良いように感じます。
但し、X-E1、D800とも外れる時は外れるので、X-E1も今まで使ってきたカメラと同様に、自然光の場合は色温度指定、ミックス光や人工光の場合はAWBと使い分けてWBの的中率の向上を図り、最終的にはRAW現像の際に必要に応じてWBを補正しています。

解像感はD800の方は輪郭強調によりリンギングが発生して不自然に見えることがあることに対して、X-E1はローパスフィルタレスと言ってもカリカリの解像感ではなく柔らかく素直な解像感で、JPEGのままとしてはX-E1の方が上質の解像感を感じます。
但しD800で輪郭強調しないで3600万画素を画像をフォトショップでX-E1と同等の1500万画素まで縮小すると、D800の方が解像感が高くかつ上質な画像となります。

高感度ノイズも輪郭強調やディテール強調の類の処理で目立ってきますが、ローパスフィルターレスのためこのような処理を強く掛ける必要がないため高感度領域での画質でも有利になっているように感じます。ノイズの質の差はありますがD800とほぼ同等の高感度特性でしょうか。

JPEGで撮ったままでは、総合的にはX-E1の方がきれいに見える確率は高いと思います。

ネット上では、X-E1ではJPEG画像が素晴らしいのでRAWで撮影する必要はないという意見が多いようですが、私的にはRAW現像により補正が必要と思われる画像は少なくありません。

X-E1の画像上の最大の問題点はRAW現像だと思います。
私がメインで使用しているRAW現像ソフトであるSilkypix Developer Studio Pro5 及びSilkypixをベースにしたX-E1付属のRAW現像ソフトであるRAW File Converterをデフォルト設定のままでX-E1のRAWを現像すると、JPEG画像とは異なる(劣る)色調に現像されてしまいます。
純正RAWソフトの場合は、デフォルトで現像では撮影したままのJPEG画像に近似した画像に現像されてしかるべきですが、特にRAW File Converterは、Silkypix Pro5よりひどい画像(私的には使い物にならないNG画像)に現像されてしまいます。

このため、初めてX-E1のRAWを現像した際は、そのような色調劣化に困惑しましたが、RAW現像による独特の色調変化のクセを分析し、そのくせを補正するSilkypix Pro5用パラメータを試行錯誤の上、作ることが出来、その以後は、Silkypix Pro5を使う限り、特に苦労することなくRAW現像できるようになりました。

RAW File Converter用の補正パラメーターの作成にもチャレンジしましたが、Pro5より機能が限定されているため、Pro5と同等まで補正することについてはギブアップしました。
結論から言うとX-E1添付のRAW現像ソフトであるRAW File Converterは、RAW現像では使い物になりません。
唯一の救いはX-E1で撮影したJPEG画像は読み込み可能であるため、フォトショップのように、JPEG用画像処理ソフトとしも使用可能なので、JPEG画像に対する微調整程度のWBや露出補正、階調補正等は可能です。この場合は、RAW現像と違ってデフォルトで色調が違うような現象は発生しません。
但しJPEG画像は画像データとしてフィルタリングされて情報量が少なくなっているため、WBや露出が大きくずれた場合は、RAWと同等の補正は不可能となります。このような場合はカメラ内のRAW現像によりWBや露出などを補正した後に、RAW File Converterで細かな補正を加えることで対応可能となります。

AdobeのCameraRAWやLightroomの最新版でもX-E1のRAWの現像が可能とのことですが、これらの最新版は持ち合わせていないため、RAWファイルをDNG変換して所有するCS5のCameraRAWで現像を試みてみましたが、盛大にモアレが発生して、やはり使い物になりませんでした。
某プロ写真家のサイトで、Lightroom4でRAW現像した画像とJPEG画像が掲載されていましたが、Silkypixのように色調が変化していました。

このようにRAW現像ソフトにより色調が変化する原因としては、あくまで個人的な推測ですが、これはX-E1では、一般的撮像素子のベイヤー配列とは異なるX-Trans CMOSセンサーを採用していますが、富士フィルムのサイトで確認すると、R、G、B別の素子の数量比率もベイヤー配列とは異なるため、ベイヤー配列とは違うアルゴリズム、パラメータでRAWを現像する必要があるのに、それらの対応が十分になされていないためではないかと思っています。

X-E1の画像のポテンシャルはかなり高いのですが、画像処理に不慣れな方にとってはRAW現像は鬼門となります。富士フィルムとSilkypixを提供する市川ソフトラボラトリーとが綿密な情報交換すればもっと実用的な専用RAW現像ソフトに改善できるはずだと思うのですが。

ネット上では、X-E1はRAW現像が必要ないとの評価があります。
画像処理に慣れていない方にとってはX-E1のRAW現像は敷居が高いため、そのような評価があると思っていますが、私的には、NG写真を除外してもJPEG撮りっぱなしの画像のほぼ半数は何かしら細かいところに不満があり、イメージした通りの画像にするためにはRAW現像による補正は必要と考えています。

現在では、RAW現像後のX-E1の画像は、D800とは画素数の差以外には有意差は無くなり、D800で、X-E1と同等の画角、画素数となるAPSクロップモードで撮影する限りでは、画質的な差はほとんど見分けられないほどです。
RAW現像の問題点についてもSilkypix Pro5に限定すれば私が作成した補正パラメータを公開していますのでこれ当てればかなり改善されるはずです。
興味のある方はブログのこちらのページからダウンロードして試してみてください。
http://komin.blog.so-net.ne.jp/2013-06-09

このパラメータは日々改良しており、本日現在、3版目になっています。

次はレンズです。
現在、18-55mmと55-200mmの2本の純正ズームレンズを持っていますが、どちらも光学性能は優秀で、解像度が高いばかりでなく、歪曲、色収差は無視できるほど少ないため、RAW現像の際にレンズ収差補正はほとんど不要です。 一方、D800で使用頻度の高いVR24-120mmF4.0は結構目立つレンズ収差が発生するため、Silkypixで現像する限りはレンズ収差をマニアルで補正する作業が必要となります。
Nikonの純正RAW現像ソフトであるNX2を使用すればレンズ収差は自動補正が可能なのですが、総合的な作業性が悪いためNX2はめったに使いません。

次は操作性の違いです。

大きさ重量とも大差でX-E1の方が携帯性では有利で、D800の半分以下の重量で同等の画質が撮影できることは大きなアドバンテージです。

操作性で最も差がある点としては、X-E1のAFの速度や信頼性が劣ることと、EVFのタイムラグを含めたシャッターレスポンスの遅さです。
AFがオートエリヤの場合も、意図した部分にピントが合せるとは限らず、人物二人を撮影しても中抜けして背景にピントが合ってしまうこともあり、AFエリアをマニアル選択してAFの確度を上げるような操作が必要となります。

またスポーツや子供、動物などのように動き回る被写体に対してはX-E1は非力です。
AFロックしたり、MFとすればAF時間分はレスポンスが早くなるのですが、EVFを除いている限りは時間差があるため、タイミングが合いません。
MF置きピンにして右目でEVFをのぞいてフレーミングを確保し、左目は直接被写体の動きを見ながらシャッタータイミングを合わせるような芸当が必要となります。

つい最近のファームアップでフォーカスエリアの移動のやり方が飛躍的に改善され、近い将来にAF速度向上やAFピーキング機能が追加されるファームアップがあるとのことで期待しているのですが。

またシャッターボタンのクリックが固いため無造作にシャッターボタンを押すとクリックのショックで手振れする可能性があります。X-Pro1はもっと軽いと感じました。

その他の操作性については慣れで解決できると思いますが、AFを含めたシャッターのタイムラブについてはD800とは大人と子供のような差があり、それを認識した上でのカメラの使い分けが必要と考えます。

バッテリーの持ちに関しても、不満があります。
撮影後即座に電源を切るなどして、気を使えば数百枚の撮影には耐えるのですが、気ままに使うと、突然バッテリーの残量アラームが出て、早々に使えなくなってしまいます。
純正バッテリーの容量が1200mAhに対して、1500mAh容量の互換バッテリーも販売されているのですが。

以上のよう、操作性やRAW現像、バッテリーについては問題大のカメラですが、被写体が動かない風景や静物、スナップなどで、極めてレベルの高い結果が得られるカメラだと感じています。

画像比較については別途紹介したいと思います。


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kiyo

コーミン さん
X100のころから、富士フイルムの名手コーミン さんの手に掛かれば、使いにくさも、愛着の内ですね。

ところで、愛用しているPHASE ONE社のCapture One Proも7.1から、X-Transに対応しています。

Capture Oneは、ドイツ製ですが、ディテイルを残しての自然なノイズ除去と、解像度の高い現像に定評があります。
色合いは、富士フイルムの色とはちょっと違いますが、コーミンさんのやられたように、各種設定には、名前を付けて保存できるので、セッティングを詰めて、フジのプロビア調とか、フジのベルビア調とか、フジのアステア調とかを作り込むことはできるんじゃないかと想像しています。

Adobeの対応は、今ひとつの結果のようですが、Silkypixと、Capture Oneと、オリジナルのカメラ撮って出しのJPEGで競い合えると楽しそうですね。


by kiyo (2013-07-20 20:23) 

コーミン

kiyoさんへ
Capture Oneの情報ありがとうございます。
このソフトでもX-Transに対応していることだけは承知していましたが、詳しい内容はわかっていませんでした。

勤めていたころは、本来の業務以外に、製品等の写真撮影や画像処理も手掛けており、その当時は必要に応じてソフトも業務用として購入できましたが、リタイア後はすべて個人の趣味の範囲であり、ハードソフトともむやみに範囲を広げるわけにはいかない事情があります。

今までの経験上、古いツールでも習熟して機能、性能を適切に活用すれば、最新高性能のツールを不慣れな状態で使うより良い結果が出ることを承知しており、当面は高望みしないで、今持っているカメラやレンズ、ソフトでベストの結果を得られるようなこと取り組んでいるつもりです。
その意味で、当面はX-E1の画像もSilkypix主体で取り組んでいくつもりです。
by コーミン (2013-07-21 00:04) 

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